【完全版】雇われ姫は、総長様の手によって甘やかされる。
予鈴が鳴る5分前。人気のない外階段で背中を丸めて座る新那を見つけた。
彼女は私の姿を確認した途端、涙腺が決壊したかのようにボロボロと大粒の涙をこぼす。
「もう、捜したんだから」
新那の前にしゃがみ込むようにして座ると、真っ赤になった瞳が目に入った。
もっと全力で走って、一秒でも早く彼女の涙を止めたかった。
ここに来る途中、怜央のことばかり考えていた自分が情けないし恥ずかしい。
「ごめんね」
「どうして瑠佳ちゃんが謝るの……って……瑠佳ちゃん?」
握りしめていたハンカチで涙を拭った新那は私の顔を見つめた後、首を傾げる。
「ん、何?」
「あの後、蓮見くんとまた喧嘩になった?」
あれは喧嘩っていうのかな。
……姫を辞めることになるかもしれない話は新那が落ち着いてからにしよう。
「してないよ。どうして?」
「だって、瑠佳ちゃんも泣きそうな顔してるよ?」
私、そんな顔してたんだ。
自分じゃ気づかなかった……。
「瑠佳ちゃん?」
「──そんなことないよ」
この気持ちをどう表現したらいいのかわからなくて、私は無理に笑顔を作った。