【完全版】雇われ姫は、総長様の手によって甘やかされる。


『喧嘩した後に仲直りすんのは子供も大人も一緒だっつの。だから、さっさと瑠佳ちゃんと仲直りしろよ』


「どうやって?」

『どうやって……ってお前。もしかして、それを聞くために俺に電話してきたのかよ』

電話口から聞こえてきたのは、本日二度目のため息。


「お前の得意分野だろ」


『まぁ、俺にとっちゃ女の子の機嫌を取るなんて朝飯前だけど』

真宙はそう言うと『エリちゃーん』と少し離れた位置にいたであろう女の名前を呼んだ。



その呼びかけに甘ったるい声で『なぁに』と返事が返ってくる。

そして、ジャリジャリと砂の上を歩くような足音が聞こえた直後、チュッとわざとらしいリップ音が響いた。

ゲッ……。あいつ今、何しやがった。


電話口から聴こえてきた音に、思わずスマホを遠ざける。

『えー何、真宙』

『んー、昨日エリちゃんが家誘ってくれたのに行けなかったから怒ってるかなーと思って』

『エリそんなので怒んないよぉ』

何を聞かされてるんだ俺は。

『それよりもキスだけ?』

『続きは電話が終わってからね』

真宙の言葉に『はーい』と素直な返事をするエリという女。

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