【完全版】雇われ姫は、総長様の手によって甘やかされる。
「瑠佳ちゃんと行きたいところいっぱいあるんだ!」
まだ薄っすらと赤い目を輝かせながら新那が笑う。
「おすすめは?」
「今日は天気がいいから今年できた駅ビルの空中庭園なんかどう?」
「空中庭園かぁー、いいね」
新那のことだから、お金をかけなくても楽しめる場所を事前に探しておいてくれたのだろう。
「そこね、撮影スポットや飲食スペースもあるんだって!」
「じゃあ、近くのスーパーで何か買ってから行こうか」
今から向かう空中庭園の話で盛り上がっていると突如、教室の空気がピリつき静寂に包まれた。
その原因がなんなのか、私はもう確認せずともわかってしまう。
「瑠佳」
数日前とは違い、彼ははっきりと私の名前を呼ぶと周りなんか気にもしない様子で目の前へとやって来た。
「今日、バイト休みになったって言ってたよな?」
いつもと変わらない口調の怜央が私に問いかける。
数時間前に言い争ったことなど、忘れてしまったのだろうか。