【完全版】雇われ姫は、総長様の手によって甘やかされる。
「そうだけど、それが「じゃあ、今日は俺に付き合え」
俺に付き合えって……。
「何、言ってるの。私はもうく……」
喉まで出かかっていた“クビ”という言葉を慌てて呑み込む。
危ない……ここ教室だった。
怜央はあとに続く言葉を察知したのか「俺はお前を手放すなんて言ってねぇ」と口にすると、銀色の髪から覗く綺麗な瞳に私を映した。
「何それ……」
「海。連れて行くって約束しただろ」
「したけど……。ていうか、私はまだ怜央のことを許したわけじゃないから。それに今日は新那と遊びに行くの」
「瑠佳ちゃん。私が言うのもなんだけど行ってきたら?」
私と怜央のやり取りを静観していた新那がぎこちない笑顔で言う。
「でも、」
「お前も来いよ」
この状況から察するにお前とは新那のこと。
「……へっ……………?」
「来るだろ?」
はい以外の答えは受け取らない。
そんな高圧的な怜央の問いかけに対して、新那はゆっくりと首を縦に振った。
「じゃあ、決まり。行くぞ」
「え、ちょ待ってよ。怜央……!」
先に教室を出た怜央を追うために新那の手を取り歩き出す。
背後からは「私、蓮見くんを怒らせたから海に沈められるんだ」という不穏な言葉が聞こえてきた。