【完全版】雇われ姫は、総長様の手によって甘やかされる。







「海だー!!!」

目の前に広がるのは絵に描いたような白い砂浜に青い海。

風に乗って流れてくる潮の匂いをもっと感じたくて、鼻から大きく息を吸う。

「はぁーこの感じ懐かしい」

数年ぶりの海に感動していたのは、どうやら私だけではなかったようで……。

「ほんとだ、海だ」

隣からは同じように語彙力を失った新那の声が聞こえてきた。

「やっぱり海沿いは肌寒いね」

「うん。来るにはまだちょっと早かったね。海入りたかったなぁ」

「足までなら大丈夫じゃない?」

私たちの会話を黙って聞いていた怜央に「ちょっとだけいい?」と尋ねると「念願の海だろ。好きにしろよ」という言葉が返ってきて、私と新那はその場でローファーと靴下を脱ぎ捨てた。

そして、砂浜へと足を踏み入れる。


「うわっ砂だ」

「砂だね〜」

相変わらず語彙力のない私たち。


「いや〜女の子が海ではしゃぐ姿はいいね。太陽よりも2人の方が眩しいよ。ねぇ、怜央サングラス持ってない?」

「は?何、くだらねぇこと言ってんだよ真宙」

「くだらないって酷いな。怜央もせっかく海に来たんだからテンション上げたら」

「……ったく、電話した時は乗り気じゃなかったくせに」

「そりゃ急に理由も言わず呼び出すからじゃん。でも、可愛い女の子がいるなら話は別でしょ」

「なんだそれ」

私と新那が一歩ずつ砂浜を歩く後ろで、何かを話す怜央と真宙くん。


どうして、ここに真宙くんもいるのか。


話は1時間ほど前に遡る───。



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