【完全版】雇われ姫は、総長様の手によって甘やかされる。
下駄箱でローファーに履き替えた私たちは、信じられない光景を目の当たりにした。
それは数メートル先の正門に集まる大勢の女子生徒の姿。
怜央のギャラリーならば、あんな風に騒ぐようなことはしないだろう。
そもそも怜央はまだ私たちの数歩前にいる。
「まるで芸能人でも来たかのような騒ぎだね」
隣を歩いていた新那に話しかけるも返事はない。
怜央と海に向かうことで頭がいっぱいな彼女にとっては、目の前の騒ぎなど大したことではないのだろう。
結局、この先で何が起きているのかわからないまま私たちは歩みを進めた。
正門前にはさっきよりも人が溢れていて、あの大群をかき分けなければ外には出られない。
どうしたものか……と考えていると、途中でバイクを取りに行っていた怜央が戻り、なんの躊躇もせず正面突破を試みた。
すると、一番手前にいた生徒が怜央に気づき道を開ける。
今度はその奥にいた生徒が。
誰かが号令をかけたわけでもないのに、次々と左右に分かれるギャラリーたち。
そして、ものの数秒で一本の通り道が完成した。