【完全版】雇われ姫は、総長様の手によって甘やかされる。
まるでスター登場。
だけど、彼女たちの顔に笑顔はない。
……って、そんなことを考えてる場合じゃなかった。
もたもたしていると、また通り道がなくなってしまう。
ギャラリーたちの急かすような視線を感じながら歩いていると、右側のほうから「おせーよ、怜央」と声をかける男の声がした。
「ごめん、道開けて」
続く男の一言で、また新たな道が完成し、その先から歩いてきたのは……。
ま、真宙くん!…………だよね?
一昨日、顔を会わせた時はアッシュグレーだった髪が今日は金色に染まっている。
けれど、彫りの深い綺麗な顔立ちと耳に着けられているピアスから察するに、彼は闇狼で副総長を務める真宙くんに間違いない。
「おい、真宙。なんでこんな騒ぎになってんだよ」
やっぱり、真宙くんだった。
「あー……。なんか連絡先を交換したいって女の子たちが絶えなくて。でも、遅れてきた怜央の責任でもあるから」
「は、俺?」
「こんないい男を一人にしてたら、どうなるかなんて容易に想像できるでしょ」
「できねーよ」