【完全版】雇われ姫は、総長様の手によって甘やかされる。
「それは残念。怜央にはもっと俺の魅力をわかってもらわないと」
真宙くんはそう言うとギャラリーたちが見ている中で、怜央の肩に腕を回した。
すると、全方位から悲鳴にも似た歓声があがる。
人混みをかき分けながら帰宅する男子生徒たちは皆、真宙くんに白い目を向けていた。
それは隣にいた“彼も”例外ではなくて……。
「いい加減にしろよ」
肩に回された腕をさっと払いのける怜央。
「怜央もこのくらいファンサービスしないと」
「何がファンサービスだよ。つーか、いい加減この状況をどうにかしろ。お前が寄せ付けた女たちだろ」
「はいはい。皆、怜央が来たからお喋りはまた今度会った時にね」
真宙くんがひらひらと手を振ると、ギャラリーたちは一斉に残念そうな声をあげる。
「真宙くん、後で連絡するね」
「私もー!」
「うん、待ってる。皆、気をつけて帰るんだよー」
真宙くんの甘いスマイルに今日一番の歓声があがった。
同じ暴走族でも人当たりの良さが違うだけでこうも相手の態度が変わるんだ。