【完全版】雇われ姫は、総長様の手によって甘やかされる。
今日は今年に入ってから一番気温の高い一日で、朝から【熱中症に注意】とスマホに警報が届いていた。
桜はすでに散り、GWも先日終了。
暦の上では夏だというが、まだ5月の中旬。
海水浴をするには時期尚早で、足だけを水につけようと決めた私と新那は、たった今「「せーの!」」と声を揃えて海の中へと飛び込んだ。
今年一番の暑さといっても、水温はまだまだ低い。
足先はキンッと冷え、腕や足には鳥肌が立つ。
でも、
「冷たいけど、まだ出たくないね」
私が思ったことを先に新那が口にした。
「せっかくの海だし、もう少し入ってよっか」
「うん!なんだか、夕日に照らされながら入る海ってエモい気分になるね」
「何それ。私はちょっとわかんない」
「えーっ。……あのさ、瑠佳ちゃん」
「ん、なーに?」
「私が転校した頃のことって覚えてる?」
「もちろん覚えてるよ」
それは私が小学4年生になってから数か月が経った頃の話だ。
隣のクラスに転校してきたのは一人の女の子。