【完全版】雇われ姫は、総長様の手によって甘やかされる。
「あの日から瑠佳ちゃんは私のヒーローなんだ」
「いや、大げさでしょ」
「大げさなんかじゃないよ……!瑠佳ちゃんが一人じゃないよって声をかけてくれたから私は頑張れたの。それなのに私は瑠佳ちゃんを一人にしてた」
その言葉の後、新那の瞳には悲しみの色が浮かんだ。
「新那?」
「……今日、蓮見くんの話を聞いて私の行動は瑠佳ちゃんにとって、負担でしかなかったことに気づいたの。バイトを辞めてほしいなんて何度も言ってごめんね」
「それは……。私が最初にきちんと話さなかったからだよ。お金を稼げるなら多少危険なバイトでもやる覚悟があるってことを。そうでなきゃ家計を支えられないってこともね」
今まで新那の前で『給料日前だから金欠だー』なんて笑って話すことはあっても、本当の不安を口にすることはなかった。
「私に話せなかったのは強くて、優しくて、一人で何でもできる。……そんな理想像を私が瑠佳ちゃんに押し付けてたからでしょ?」
新那の中にある理想の私を壊さないように──。
違う、私はそんなにできた人間じゃない。