主役になれないお姫さま
会議の後、紹介された横谷部長代理がかっこいいと女性社員が騒いでいた。

「横谷部長代理なら私アリかも〜♡」

「うんうん、身長も高いし、かなりイケおじだったよねー!」

と、今年新卒で入社した女の子たちまで盛り上がっている。

アシスタントメンバーで第一会議室の片づけを終え、それぞれ自分の席へと戻っていった。
私もみんなと一緒にオフィスに戻ろうとしたが、その前にお手洗いによることにした。

 さっき目が合ったから私の存在に一真さんも気づいただろうな…。それにしても、一真さん、早速モテてた…。

お手洗いに設置されている小さなロッカーから化粧ポーチを取り出し、メイクを直しながら先ほどの光景を思い出していた。
ポーチにリップをしまい、もとにあった場所に戻してロッカーの扉にダイヤルロックを掛けているとスマホがブブッと震え、メッセージが届いたことを知らせた。

【めちゃくちゃ驚いた。】

一真さんからのメッセージだった。
自分も驚いたと直ぐに返信をした。

【松山には俺たちの関係を話しておいた。】

彼の言う松山とは松山副社長のことだ。
どうやら一真さんは私たちのことを隠すつもりはないらしい。

佐々木先輩とは内緒の関係だったのでオープンにできるのは嬉しいが、着任して間もない一真さんとの関係を広めるのはどうなのかとも思う。

まぁ、聞かれたら否定しないスタンスでいようと思った。

実際のところ、週末の出来事はあまりにも突然で、一真さんと付き合い始めたと言う実感がなかった。
一真さんが目の前にいないと、私の妄想なのではないかと思ってしまうほど。
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