主役になれないお姫さま
取り戻した日常
入院してから一真さんは仕事を早く切り上げ申し訳ないほど毎日私が入院する病院へ顔を出してくれた。そして会社での出来事を報告してくれた。
佐々木先輩と沙織ちゃんの横領の話も教えてくれた。今回の事故のおかげで、なんであんな人と付き合っていたのだろうと疑問に思うほど綺麗さっぱり吹っ切れたのだ。
『恋は盲目』、『あばたもエクボ』に見えたのかも知れない。
その後の二人は副社長の温情により、佐々木先輩は2段階の降格と部署移動になり、沙織ちゃんは育休終了後に自主退職になる予定だ。これから出産を控えているのに、両親共に無職では可哀そうだろうとの計らいだそうだ。
一真さんは処分が甘すぎると反対したそうだが、子どもには罪はないという副社長の意向だ。
私の実家に一真さんが『詩乃さんに辛い思いをさせてしまった。』『守り切れなかった。』と謝罪に来たそうだが、誰ひとり彼を責める人間はいなかった。
私を溺愛している兄ですら…。
むしろ母には『あんな責任感の強い人逃しちゃダメよ』と言われた。
母からは直接お腹にいた赤ちゃんの事について尋ねられることは無かったが、色々と気を使って、労ってくれるのを見ると話は聞いているのだと思う。お見舞いに来てくれた時に「ひーくん元気?」と聞くと一瞬気まずそうな表情をしていた。子どもの話題を避けてくれていたのかもしれない。
退院の日は一真さんは休みを取って病院まで迎えにきてくれた。
「荷物はこれで全部か?」
「うん。ほとんど病院のレンタルしてたから荷物はほとんどないの。」
荷物をまとめたバッグを車のトランクに積むと車でマンションへ帰宅した。
「ふーっ!やっとここに戻ってこれた!」
1週間ちょっとの入院だったが引っ越して間もないとはいえ自宅が1番落ち着いた。
「詩乃はソファーに座ってて。長く独身生活をしていたんだ、家事は任せろ。」
そう言うと、私が入院中に買い揃えたお茶の種類を並べてみせた。
「コーヒーばかりじゃ胃が荒れるからな…。また、つわりと胃炎を間違えられると困るし、お茶を色々買っておいた。」
そう話す一真さんは照れていた。
自分は水かコーヒーしか飲まない人なのに…。
そう言えば、何故妊娠したのだろう…。
普段はきちんと避難をしていたはず…。
もし、一真さんに浮気を疑われていたら…。
「ねぇ、今更なんだけど…、私たちっていつも避妊してるよね?…もしかして一真さんは私が浮気したと思ってる??」
「詩乃は浮気できるような性格じゃないだろ。…その件については、実は心当たりがあって…。」
一真さんは気まずそうな顔をしながら視線を逸らし、ティーカップにお湯を注いだ。
「心当たり?」
「詩乃にとって記憶にない一回があるだろ?」
「…もしかして、初めて会った日?」
「そう。詩乃が愛しくて…。何が何でも繋ぎ溜めておきたかった。絶対に俺のものにしたかったんだ…。」
「えっ!?わざとだったの?」
「あれはもう、人間の本能だな。」
淹れたてのお茶が入ったマグカップを私の前に置くと、悪戯が成功した子供のようにくすりと笑ってみせる。
「笑い事じゃないよ…。」
「俺の執念だよ。あの一回で、できたとするなら…。詩乃との子どもなら、俺1人でも育てるつもりでいたんだ。それくらいお前に惚れてるんだ。」
自分様に淹れたコーヒーをテーブルに置くと誤魔化すように軽くチュッとキスをした。
「ごめん。これからは同意無しではもうしない…。」
しゅんとした子犬のような目で見られると私も弱くなる。
「…子どもは、結婚してからがいいな。」
「そうだな。もう少し2人の時間も大切にしないとな…。」
今度は先ほどのキスとは違い、愛情がたっぷり込められたキスをされた。
佐々木先輩と沙織ちゃんの横領の話も教えてくれた。今回の事故のおかげで、なんであんな人と付き合っていたのだろうと疑問に思うほど綺麗さっぱり吹っ切れたのだ。
『恋は盲目』、『あばたもエクボ』に見えたのかも知れない。
その後の二人は副社長の温情により、佐々木先輩は2段階の降格と部署移動になり、沙織ちゃんは育休終了後に自主退職になる予定だ。これから出産を控えているのに、両親共に無職では可哀そうだろうとの計らいだそうだ。
一真さんは処分が甘すぎると反対したそうだが、子どもには罪はないという副社長の意向だ。
私の実家に一真さんが『詩乃さんに辛い思いをさせてしまった。』『守り切れなかった。』と謝罪に来たそうだが、誰ひとり彼を責める人間はいなかった。
私を溺愛している兄ですら…。
むしろ母には『あんな責任感の強い人逃しちゃダメよ』と言われた。
母からは直接お腹にいた赤ちゃんの事について尋ねられることは無かったが、色々と気を使って、労ってくれるのを見ると話は聞いているのだと思う。お見舞いに来てくれた時に「ひーくん元気?」と聞くと一瞬気まずそうな表情をしていた。子どもの話題を避けてくれていたのかもしれない。
退院の日は一真さんは休みを取って病院まで迎えにきてくれた。
「荷物はこれで全部か?」
「うん。ほとんど病院のレンタルしてたから荷物はほとんどないの。」
荷物をまとめたバッグを車のトランクに積むと車でマンションへ帰宅した。
「ふーっ!やっとここに戻ってこれた!」
1週間ちょっとの入院だったが引っ越して間もないとはいえ自宅が1番落ち着いた。
「詩乃はソファーに座ってて。長く独身生活をしていたんだ、家事は任せろ。」
そう言うと、私が入院中に買い揃えたお茶の種類を並べてみせた。
「コーヒーばかりじゃ胃が荒れるからな…。また、つわりと胃炎を間違えられると困るし、お茶を色々買っておいた。」
そう話す一真さんは照れていた。
自分は水かコーヒーしか飲まない人なのに…。
そう言えば、何故妊娠したのだろう…。
普段はきちんと避難をしていたはず…。
もし、一真さんに浮気を疑われていたら…。
「ねぇ、今更なんだけど…、私たちっていつも避妊してるよね?…もしかして一真さんは私が浮気したと思ってる??」
「詩乃は浮気できるような性格じゃないだろ。…その件については、実は心当たりがあって…。」
一真さんは気まずそうな顔をしながら視線を逸らし、ティーカップにお湯を注いだ。
「心当たり?」
「詩乃にとって記憶にない一回があるだろ?」
「…もしかして、初めて会った日?」
「そう。詩乃が愛しくて…。何が何でも繋ぎ溜めておきたかった。絶対に俺のものにしたかったんだ…。」
「えっ!?わざとだったの?」
「あれはもう、人間の本能だな。」
淹れたてのお茶が入ったマグカップを私の前に置くと、悪戯が成功した子供のようにくすりと笑ってみせる。
「笑い事じゃないよ…。」
「俺の執念だよ。あの一回で、できたとするなら…。詩乃との子どもなら、俺1人でも育てるつもりでいたんだ。それくらいお前に惚れてるんだ。」
自分様に淹れたコーヒーをテーブルに置くと誤魔化すように軽くチュッとキスをした。
「ごめん。これからは同意無しではもうしない…。」
しゅんとした子犬のような目で見られると私も弱くなる。
「…子どもは、結婚してからがいいな。」
「そうだな。もう少し2人の時間も大切にしないとな…。」
今度は先ほどのキスとは違い、愛情がたっぷり込められたキスをされた。