主役になれないお姫さま
退院してから三日目。今日から職場復帰をすることになっている。あと一週間くらいのんびりしたらどうだと言われたがもうすぐやってくる繁忙期に向けて、できるだけ仕事を片付けておきたかった。
入院する前は当たり前に別々で出勤していたのだが、今日からは一緒に通勤すると一真さんが張り切っていた。
あの事故で私たちの関係は一部の人間に知れ渡っていた。
「ねぇ。本当に一緒通勤するの?」
「当たり前だ、始めからこうすべきだったんだ!詩乃は完全に俺のものだって見せ付けてやる。そうしたら佐々木も大人しくしていたかもしれない。」
昨晩からずっとこの調子だった…。
「詩乃は俺との付き合いを皆に知られるのは嫌か?詩乃からみれば干支が一回りも違うおじさんだもんな…。」
「嫌ではないけど…。」
「けど何だ?」
表情を見るために覗き込んでくる。
「私が一真さんの恋人なんて不釣り合いって思われそうな気がして…。」
「君以上に俺に相応しい女性なんていないよ。不釣り合いと言うならば、若い君にとってアラフォーな俺の方が釣り合ってないんじゃないか?」
「一真さんはイケメンだから歳はかんけいないよ…。それに、アラフォーには見えないし…。」
「じゃあ、詩乃にとって俺は合う?合わない?」
「…すごく、合う。」
「よかった。俺たちにとって大切な事はそこじゃないか?他人なんか気にするのはやめよう。」
微笑むと優しく頭を撫でてくれた。
「そろそろ出発して良いか?」
「あっ!まって!」
仕方のないことではあるが、突然長い休みを貰ってしまった為、2課のメンバーには迷惑をたくさんかけてしまった。お詫びに買っておいた有名なバームクーヘンのお店の紙袋を手に取った。
「うん、これで忘れ物はないわ!」
鍵を閉めるとスッと私が持つバームクーヘンの紙袋を持ってくれた。何でもやることがスマートだ。
「ありがとう。」
「愛しの姫のためですから。」
そう言うと玄関先だというのに周りを気にせずにキスをした。
…もぉ、場所を考えてよ。
耳まで真っ赤になった私を見て、何故か嬉しそうな顔をしていた。
たった二駅だが満員電車はツラい。
ぎゅうぎゅうに押し込められた車内では、私が押し潰されそうになるのを体を壁にして守ってくれた。
「一真さんは背が高くて羨ましいな…。」
駅から会社までの道のりを歩きながらつぶやく。
「そんなに羨ましいか?色んなところに頭ぶつけるぞ?」
「あはは。でも、満員電車で上の方の綺麗な空気を吸えるでしょ?私なんていつも知らないおじさんの吐いた息ばかり…。」
「それは嫌だな…。明日からは車にするか。」
一真さんが真剣な顔でいると、見慣れた男性がにやけ顔で話しかけてきた。
「それは過保護過ぎじゃないか?俺だって大抵は電車通勤だぞ。」
「…松山。」
「副社長!おはようございます。」
後ろから話を聞いていたのか副社長が会話に混ざってきた。
「三浦さん、おはよう。体調はもう大丈夫?」
「はい、充分お休みさせていただきました。」
「今回は僕らの管理不行き届きなところがあったからね。本当に申し訳ないと思ってるよ。」
「申し訳ないと思うならクビにしてくれ。」
「お前だって篠宮社長の娘さんに一度はチャンスを与えただろ?それと同じ考えだよ。それに何度も言うが両親とも無職では生まれてくる子どもが可哀想だ。」
「俺はあいつと同じ会社というだけで虫唾が走る。」
「三浦さん、誰かから聞いてる?コイツ副社長室で佐々木くんに殴りかかって、止めなければ殺してしまいそうな勢いだったんだよ。」
「いつも冷静な一真さんがですか??」
チラリと一真さんを見ると気まずそうにしている。
「松山、そう言うのは秘密にしててくれ。」
「俺はお前の意外な一面が見られて得したと思ったがな。ははは。」
一真さんも副社長も2人でする会話は学生時代に戻ったようなじゃれ合う感じがして仲の良さを改めて感じた。
…本当に仲良しな二人なんだな。
会社では役職付きのお偉い2人に挟まれた状態でエレベーターに乗り、私だけ営業のフロアで降りると、二人はそのまま上の階にある副社長室へと向かった。
入院する前は当たり前に別々で出勤していたのだが、今日からは一緒に通勤すると一真さんが張り切っていた。
あの事故で私たちの関係は一部の人間に知れ渡っていた。
「ねぇ。本当に一緒通勤するの?」
「当たり前だ、始めからこうすべきだったんだ!詩乃は完全に俺のものだって見せ付けてやる。そうしたら佐々木も大人しくしていたかもしれない。」
昨晩からずっとこの調子だった…。
「詩乃は俺との付き合いを皆に知られるのは嫌か?詩乃からみれば干支が一回りも違うおじさんだもんな…。」
「嫌ではないけど…。」
「けど何だ?」
表情を見るために覗き込んでくる。
「私が一真さんの恋人なんて不釣り合いって思われそうな気がして…。」
「君以上に俺に相応しい女性なんていないよ。不釣り合いと言うならば、若い君にとってアラフォーな俺の方が釣り合ってないんじゃないか?」
「一真さんはイケメンだから歳はかんけいないよ…。それに、アラフォーには見えないし…。」
「じゃあ、詩乃にとって俺は合う?合わない?」
「…すごく、合う。」
「よかった。俺たちにとって大切な事はそこじゃないか?他人なんか気にするのはやめよう。」
微笑むと優しく頭を撫でてくれた。
「そろそろ出発して良いか?」
「あっ!まって!」
仕方のないことではあるが、突然長い休みを貰ってしまった為、2課のメンバーには迷惑をたくさんかけてしまった。お詫びに買っておいた有名なバームクーヘンのお店の紙袋を手に取った。
「うん、これで忘れ物はないわ!」
鍵を閉めるとスッと私が持つバームクーヘンの紙袋を持ってくれた。何でもやることがスマートだ。
「ありがとう。」
「愛しの姫のためですから。」
そう言うと玄関先だというのに周りを気にせずにキスをした。
…もぉ、場所を考えてよ。
耳まで真っ赤になった私を見て、何故か嬉しそうな顔をしていた。
たった二駅だが満員電車はツラい。
ぎゅうぎゅうに押し込められた車内では、私が押し潰されそうになるのを体を壁にして守ってくれた。
「一真さんは背が高くて羨ましいな…。」
駅から会社までの道のりを歩きながらつぶやく。
「そんなに羨ましいか?色んなところに頭ぶつけるぞ?」
「あはは。でも、満員電車で上の方の綺麗な空気を吸えるでしょ?私なんていつも知らないおじさんの吐いた息ばかり…。」
「それは嫌だな…。明日からは車にするか。」
一真さんが真剣な顔でいると、見慣れた男性がにやけ顔で話しかけてきた。
「それは過保護過ぎじゃないか?俺だって大抵は電車通勤だぞ。」
「…松山。」
「副社長!おはようございます。」
後ろから話を聞いていたのか副社長が会話に混ざってきた。
「三浦さん、おはよう。体調はもう大丈夫?」
「はい、充分お休みさせていただきました。」
「今回は僕らの管理不行き届きなところがあったからね。本当に申し訳ないと思ってるよ。」
「申し訳ないと思うならクビにしてくれ。」
「お前だって篠宮社長の娘さんに一度はチャンスを与えただろ?それと同じ考えだよ。それに何度も言うが両親とも無職では生まれてくる子どもが可哀想だ。」
「俺はあいつと同じ会社というだけで虫唾が走る。」
「三浦さん、誰かから聞いてる?コイツ副社長室で佐々木くんに殴りかかって、止めなければ殺してしまいそうな勢いだったんだよ。」
「いつも冷静な一真さんがですか??」
チラリと一真さんを見ると気まずそうにしている。
「松山、そう言うのは秘密にしててくれ。」
「俺はお前の意外な一面が見られて得したと思ったがな。ははは。」
一真さんも副社長も2人でする会話は学生時代に戻ったようなじゃれ合う感じがして仲の良さを改めて感じた。
…本当に仲良しな二人なんだな。
会社では役職付きのお偉い2人に挟まれた状態でエレベーターに乗り、私だけ営業のフロアで降りると、二人はそのまま上の階にある副社長室へと向かった。