主役になれないお姫さま
「詩乃は俺の嫉妬心を煽る天才だな。」

帰宅直後の一真さんに抱きしめられながら言われた。

「秋吉くんのことね。中学校の同級生なの。」

まさか初恋の相手だとは一真さんには言えなかった。

「それだけ？」

「中学２年生の時に突然お父さんの仕事の都合で海外に引っ越したのよ。今日偶然会って、もし、当時の友達と私がまだつながっているなら取り持って欲しいって言われたの。それで連絡先をもらったわ。」

カバンからもらった名刺を取り出して一真さんに見せた。

「詩乃はどうするの？」

「そうするも何も…。当時仲良が良かった友達と連絡とって一度ぐらい食事をって思っているわ。」

「分かった。」

もっと質問攻めにあうのかと思ったら意外とあっさりと引いてくれた。

納得してくれたのかはわからないが、私から離れると寝室に向かいスーツから部屋着に着替えて戻ってきたので、それ以上話は掘り下げずに夕食にすることにした。
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