主役になれないお姫さま
定刻の5分前になるとほとんどの営業メンバーが第一会議室に集まっていた。
営業部は海外をターゲットとした1課、首都圏をターゲットした私が所属する2課、地方をターゲットにした3課と1~3課まであるので営業アシスタントのスタッフを合わせると30人を超える。
もちろん、2課メンバーには週末に結婚式を挙げた佐々木先輩も含まれていた。
メインの営業部隊を前の方に座らせてアシスタントメンバーは後ろの方の席につく。
どうやら2課メンバーだけではなく、集められたメンバーの誰も今から発表される人事の内容は知らないようだった。
「みんな、おはよう。忙しいところ突然集まってもらって済まないね。」
時間になるとスラっと背の高い副社長が勢いよく第一会議室に入ってきた。
「今日は皆に報告がある。我が会社の稼ぎ頭の営業部のトップである沼田部長は今年で定年を迎える。そこで後任が見つかったので是非紹介させてくれ。」
副社長がそう言うと会議室に副社長の様にスラっと背の高い男性が入ってきた。
「えっ!?」
驚きのあまり思わず声が出てしまい慌てて両手で口を塞いだ。
私の声に驚いて振り返った近くのアシスタントメンバーに申し訳ないと会釈する。
驚いて声が出るのも仕方がない。
目の前には昨日まで一緒に甘いひと時を過ごした一真さんが現れたのだ。
「彼は横谷君と言って大手企業からもヘッドハンティングされるやり手の営業マンだ。実は彼とは学生時代からの友人で頼み込んでうちの営業部をみてもらうことになった。沼田部長が定年を迎えられるまでは部長代理という肩書で引継ぎを行ってもらう予定だ。」
副社長が前へと手で促すと一真さんは皆に挨拶の言葉を述べた。
「皆さん、初めまして。ご紹介に与りました横谷 一真です。この度、沼田部長の後任のお話を頂き光栄に思っております。皆さんと力を併せて会社を盛り上げていきたいと思っておりますので、よろしくお願いします。」
一真さんが頭を下げ顔を上げた瞬間にバチっと目が合った。
彼も一瞬驚いた顔を見せたが直ぐに何もなかった様な顔に戻る。
先週、引っ越してきたばかりって言ってたけど、まさか同じ会社になるなんて…。
「三浦さん?どうしたの?」
1課でアシスタントをしている木村さんが声をかけてくれた。1課のアシスタントというだけあって語学に長けている。
「…いえ、ちょっとぼーっとしちゃって…。」
「最近疲れているんじゃない?体調には気を付けてね!」
「ありがとうございます。」
理由は告げていないが、佐々木先輩にフラれて気落ちしているのを気づいて、心配して声をかけてくれたのも彼女だった。
悩み事があるならいつでも話を聞くから声かけて。と言われていた。彼女ほどよく周りの人を見ている人はいないと思った。
もしかすると何も言わないだけで佐々木先輩との関係も気づいていたのかもしれない。
営業部は海外をターゲットとした1課、首都圏をターゲットした私が所属する2課、地方をターゲットにした3課と1~3課まであるので営業アシスタントのスタッフを合わせると30人を超える。
もちろん、2課メンバーには週末に結婚式を挙げた佐々木先輩も含まれていた。
メインの営業部隊を前の方に座らせてアシスタントメンバーは後ろの方の席につく。
どうやら2課メンバーだけではなく、集められたメンバーの誰も今から発表される人事の内容は知らないようだった。
「みんな、おはよう。忙しいところ突然集まってもらって済まないね。」
時間になるとスラっと背の高い副社長が勢いよく第一会議室に入ってきた。
「今日は皆に報告がある。我が会社の稼ぎ頭の営業部のトップである沼田部長は今年で定年を迎える。そこで後任が見つかったので是非紹介させてくれ。」
副社長がそう言うと会議室に副社長の様にスラっと背の高い男性が入ってきた。
「えっ!?」
驚きのあまり思わず声が出てしまい慌てて両手で口を塞いだ。
私の声に驚いて振り返った近くのアシスタントメンバーに申し訳ないと会釈する。
驚いて声が出るのも仕方がない。
目の前には昨日まで一緒に甘いひと時を過ごした一真さんが現れたのだ。
「彼は横谷君と言って大手企業からもヘッドハンティングされるやり手の営業マンだ。実は彼とは学生時代からの友人で頼み込んでうちの営業部をみてもらうことになった。沼田部長が定年を迎えられるまでは部長代理という肩書で引継ぎを行ってもらう予定だ。」
副社長が前へと手で促すと一真さんは皆に挨拶の言葉を述べた。
「皆さん、初めまして。ご紹介に与りました横谷 一真です。この度、沼田部長の後任のお話を頂き光栄に思っております。皆さんと力を併せて会社を盛り上げていきたいと思っておりますので、よろしくお願いします。」
一真さんが頭を下げ顔を上げた瞬間にバチっと目が合った。
彼も一瞬驚いた顔を見せたが直ぐに何もなかった様な顔に戻る。
先週、引っ越してきたばかりって言ってたけど、まさか同じ会社になるなんて…。
「三浦さん?どうしたの?」
1課でアシスタントをしている木村さんが声をかけてくれた。1課のアシスタントというだけあって語学に長けている。
「…いえ、ちょっとぼーっとしちゃって…。」
「最近疲れているんじゃない?体調には気を付けてね!」
「ありがとうございます。」
理由は告げていないが、佐々木先輩にフラれて気落ちしているのを気づいて、心配して声をかけてくれたのも彼女だった。
悩み事があるならいつでも話を聞くから声かけて。と言われていた。彼女ほどよく周りの人を見ている人はいないと思った。
もしかすると何も言わないだけで佐々木先輩との関係も気づいていたのかもしれない。