「Of My Disteny」ーゴールドー
ひゅ~っと吹いた風に髪がなびく。

頬にかかるだけで、ゾワゾワして一気に血の気が引いていくような冷たい感覚に陥る。

た、高い…!

下から見るより全然高い!!!

てゆーかもう下なんか見れない!!!

「瑠衣ちゃん、行くよ!」

「え、待ってまだ心の準備がっ」

スタート地点の柱をガッチリ掴んで、全く一歩が踏み出せる気がしない。
なのに洸は命綱もいらないくらい普通に立っている。

そのゆらゆらした橋に平然と立ってられる体幹も凄いんだけど!

「瑠衣ちゃん…?」

「な、何…っ」

「もしかして高いとこ苦手?」

「に、苦手なの!悪い!?」

「んーにゃ、別に悪くはないけど」

スッと手のひらが伸びてくる。

私の前に差し出された。

「手、貸してよ」

いつもは子犬みたいにキャンキャンしてるのに、なんだか落ち着いた声でドキッと胸が音を為した。

「……~っ」

「ほら、大丈夫だからさ!」

ゆっくり柱から右手を離す。

そーっと手を伸ばして、洸の手を取るように。

き、緊張する…

洸の手を取ることも、一歩踏み出さないと届かないことも。

重くてなかなか動こうとしない足を、すぅっと息を吸って自分に暗示をかけるように踏み出した。

「あっ」

「瑠衣ちゃん!?」

洸の手を取ろうとした時、ひゅうっと風が吹いたせいで踏み外してしまった。

やばい、落ちる…!怖い…っ!

ふわっと、体が浮いた気がした。

「……?」

地上に真っ逆さまかと思えば、一向に変わらない視線にすぐにハッとした。

「瑠衣ちゃん大丈夫?」

「洸!!?」

落ちそうになった私の体をひょっと持ち上げ、不安定な橋の上で軽々と抱き上げた。

「え、ちょっとっ」

「あ、動くと危ないから!」

「…っ」

ドキドキと心臓がうるさい。


これはどっちにドキドキしてるの?

高くて怖いから?

それとも洸に抱き上げられて…?


「もういいよ!てゆーか私重いし!」

「そう?全然だけど」

「重いよ!もう下ろして!」

「だいたいうちの犬とおんなじぐらいだけどな」

「それって重いの!?軽いの!?」

静かに丁寧にその場に下ろされた。

でもドキドキは止まらなくて、てゆーか高すぎて無理!これは無理!

「はい、瑠衣ちゃん」

「…。」

もう一度差し出された手のひら、重ねるように手を取った。

目を合わせた洸がにこって笑ってた。 

ちゃんと手は男の子なんだよね。

私と3センチしか変わらないのに。

腕だって身体だって、私と全然違って。


私をドキドキさせる。


やっぱり止まらないよ。


私の気持ちはどこまで伝わってるのかな?


洸は私の事、どう思ってるの?


繋いだ手から伝わったらいいのに。
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