復讐相手の将軍閣下が望むので、専属の侍女としてお仕えすることになりました~溺愛されても餌付けされても、すべてを奪ったあなたを許すつもりはありませんのであしからず~
「申し訳ございません」

 彼がなんのことを言っているのか、とんとわからない。だけど、このままだと面倒くさい。

 申し訳なさそうな表情を作って謝罪してみた。

「それが謝罪する者の態度か? 顔か? ったく。靴どころか、靴下までズクズクだったぞ。しかも、臭かった」

 ああ、思い出したわ。

 廊下を丹念に磨いているとき、彼がわざと突っ込んできてみずからバケツの水をひっかぶったのよね。

 みずからひっかぶっておいていちゃもんをつけてくるなんて、まるで小説にでてくる意地悪な継母みたい。

「心から反省しています」

 もうっ! 面倒くさいったらないわね。

 こういうタイプは、墓場までついてきてネチネチ嫌味を言うのよ。

 つぎは、反省している感満載で言ってみた。

「チッ! 噂どおり無能なくせに態度のデカい奴だ」

 なにかきこえたような気がしたけれど、いいわよね。
< 108 / 158 >

この作品をシェア

pagetop