復讐相手の将軍閣下が望むので、専属の侍女としてお仕えすることになりました~溺愛されても餌付けされても、すべてを奪ったあなたを許すつもりはありませんのであしからず~
「レディ、大丈夫ですか?」

 そのとき、右肩に手が置かれた。

 右側を見ると、ウイリアムが顔をのぞきこんできている。

「レディ、落ち着いて」

 左側から、トリスタンがささやいてきた。

 二人のお蔭で、バカなことを考えている場合ではないと自分を戒めることが出来た。

「宰相閣下、ご覧になられましたか?」

 落ち着くのよ、わたし。

 いまから、なのだから。

「あ、ああ、ああ」

 宰相をもう一度見た。

 彼は、「毛がおもいっきり残念」な頭を上下させている。

 宰相は、心の中で「わたしよ、とにかく落ち着くのだ」と何度も言いきかせているに違いない。

「ご心配にはおよびません。彼らは、味方です。ウオーレン様のやり方に不満を抱いているようですので、味方に引き込みました」

 ウイリアムとトリスタンのことである。

 彼らには、事前に話をしてあった。

 だって、ぜったいにそうした方が計画がうまくいく。

 そうしたら、彼らは即座に計画にのってくれたわけ。

「そ、そうか」

 宰相がつぶやいた。

「ほんとうに、ほんとうに死んだのだな?」

 彼は、自分の目で一部始終を見たにもかかわらずいま見ていることが信じられないみたい。

 そのように尋ねてきた。
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