復讐相手の将軍閣下が望むので、専属の侍女としてお仕えすることになりました~溺愛されても餌付けされても、すべてを奪ったあなたを許すつもりはありませんのであしからず~
 それはともかく、宰相が失敗すれば報酬の金貨を取り返していたということは、ウオーレンは自分を襲ってきた暗殺者たちを殺さなかったわけね。

 先夜もそうだった。あの夜だけでなく、彼はいつも命までは奪わないわけなのね。

「そうですわね。名もなきか弱きレディが『銀仮面の獣将』をあっけなく殺してしまっただなんて、にわかには信じられないですわよね?」
「……」

 宰相ににこやかに尋ねたけれど、きこえなかったみたい。

 彼は、薄い眉を寄せただけだった。

「毛がおもいっきり残念」なのは、眉も同じである。

「それでは、これでいかがでしょうか?」

 宰相がいちゃもんをつけてくるのは想定内である。だから、対処出来るよう準備している。

 居間の壁際に設置してあるローチェストに近づくと、そこの抽斗から準備しているものを取り出して戻った。

 ウオーレンの横にふたたび両膝を折り、それを銀仮面の上にかざしてみた。
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