復讐相手の将軍閣下が望むので、専属の侍女としてお仕えすることになりました~溺愛されても餌付けされても、すべてを奪ったあなたを許すつもりはありませんのであしからず~
「マキ。ウオーレンがきみの両親や兄姉を殺し、クルーズ王国を滅ぼしたというまことしやかな噂を流したのがだれかは、想像がつくだろう? クルーズ王国の宰相だったクソ野郎だ。ちなみに、そのクソ野郎とは、きみを利用したわが国の宰相テッド・スピアリングの兄だ。戦後、テッドは兄と一緒にこの帝国にやって来た。そして、三大公爵家筆頭のスピアリング公爵家のご令嬢の婿になった。ああ、問われる前に答えておこう。その兄であるクソ野郎は、気の毒な奴でな。事故死したのだ。例の別荘の火事から五年ほど経ったある寒い夜のことだった。彼は、密約したわが国の宰相からあてがわれたボロ屋敷で一人暮らしていた。ある夜、そのボロ屋敷に大型獣が侵入した。それはもう残忍な獣でな。クソ野郎は、ズタボロにされてしまったらしい。あぁそれから、火事の件に関わった当時のわが国の宰相もまた、気の毒なことになった。火事の少し後、みずから引退したのだ。大規模な汚職や女性問題が発覚し、引退という形で一線を退いたわけだ。義理の息子になったテッドにスピアリング公爵の爵位と宰相という地位を譲ってな。そのあと、領地でスローライフを送ろうとしたその領地までの道中、不慮の事故に遭ってあっけなく死んだ」

 メイナードと視線が合うと、彼は両肩をすくめた。

 彼の両肩も焼けただれているのかしら。

 そんなどうでもいいようなことをふと思った。
< 146 / 158 >

この作品をシェア

pagetop