復讐相手の将軍閣下が望むので、専属の侍女としてお仕えすることになりました~溺愛されても餌付けされても、すべてを奪ったあなたを許すつもりはありませんのであしからず~
「将来、きみに会ったときにきみを怖がらせたくない。そう思ってこれをつけたんだ」
「怖がる? わたしがですか? 言っておきますが、あなたの顔に驚くことはありません。たしかに、これだけの美貌ですから、そういう意味では驚きましたが。少なくとも火傷の跡のことで驚いたり、ましてや不愉快に思うことはありません。だって、わたしや兄姉を救ってくれた名誉の跡なんですもの」

 テーブル越しに手を伸ばすと、美貌の火傷の跡を撫でていた。無意識にそうしていた。

「あいにく、約束のことは覚えていません。ですから、ウオーレン様はそんな約束に縛られる必要はないのです。すぐにでもわたしをここから放り出してもいいのですよ。あるいは、わたしが元いた宮殿に送り返してもいいのです。なにもここに置いておく必要はありませんよね?」

 ウオーレンは、彼が表現するところのこまっしゃくれたガキの理不尽な約束をきっちり守ってくれようとしている。そんな彼は、彼らしいと言えば彼らしい。

 まぁ、ここからほんとうに放り出されたり宮殿に送り返されたら、正直困るけれど。

 一応、そう言っておかないと、わたし自身が気持ち的に落ち着かない。
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