復讐相手の将軍閣下が望むので、専属の侍女としてお仕えすることになりました~溺愛されても餌付けされても、すべてを奪ったあなたを許すつもりはありませんのであしからず~
 葡萄酒で煮込んだ肉なら、ナイフは必要ない。フォークで突っつくだけで、ホロホロと崩れてしまうから。口の中に入れた瞬間、とろけてしまう。肉をトマトやハーブのきいたスープで煮込むのもアリだけど、個人的には葡萄酒で煮込んだ方が好みだわ。

 これだったら、パンはハード系の方がいいわね。煮込んだソースは肉の旨味が凝縮されているから、それをつけて食べるのが最高なのよ。

 クンクンと嗅ぎながら、においのもとをたどる。

 じょじょに近づいているのを実感する。

 すると、廊下の先にポツンと何かが浮かび上がっているのを視覚した。

 近づくにつれ、小さなテーブル上に皿がのっているのが確認できる。

「廊下に料理が?」

 いけない。

 ヨダレがツツツーッと垂れてきた。慌ててブラウスの袖で口許を拭う。

 そのとき、廊下にどでかい影が現れた。

 雄々しいといってもいいくらい立派な影である。

 ウオーレン・シャムロック……。

 速度を緩めることなく、彼に近づいた。足の勢いは、どんどん増していく。それこそ、ズンズンと突き進んだ。

 目は、ウオーレン・シャムロックではなく彼のすぐ側にある皿に釘付けになっている。

 この最高最強のにおいのもとは、あの皿の料理に違いない。
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