復讐相手の将軍閣下が望むので、専属の侍女としてお仕えすることになりました~溺愛されても餌付けされても、すべてを奪ったあなたを許すつもりはありませんのであしからず~
「軍仕込みの荒くれ料理だが、味はそんなに悪くないはずだ。マナーは気にしなくていい。量はたっぷりあるから、存分に攻略してくれ」
「承知しました。そういうことは、わたしの一番得意とするところです。攻略でも占領でもさせていただきます」

 皮肉を言ってやった。

 攻略に占領……。

 だけど、いろいろな国や地域で日常的にそれらをやっている彼には、皮肉だったとは気がつかなかったに違いない。

「いただきます」

 手を合わせて様々な神や人たちに感謝し、さっそく食べ始めた。

 肉の葡萄酒の煮込みがメインで、サラダやチーズやハード系のパンや果物がところ狭しと並んでいる。

 飲み物は、水が注がれている。

 あとで知ったことだけど、この古びた宮殿の一画に湧き水があるらしい。この水は、その湧き水なのである。

 最高に美味しい水で、この日以降しょっちゅう水を飲むようになった。

 それはともかく、とにかく食べた。食べて食べて食べまくった。

 いっさいの思考を停止し、五感の動きを止めて。

 一心不乱という言葉は、まるでいまこのときの為に存在しているのに違いない。

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