復讐相手の将軍閣下が望むので、専属の侍女としてお仕えすることになりました~溺愛されても餌付けされても、すべてを奪ったあなたを許すつもりはありませんのであしからず~
「きみは、やさしいな。おれのつまらぬ人生に泣いてくれるとは」
「な、なんですって?」

 自分の耳を疑ってしまった。

 泣いている? そんなバカなことがあるものですか。

 右手で右頬を触ってみた。それから、左手で左頬に触れてみた。

 どちらも濡れている。

 なぜ? 泣く理由がわからない。

 もしかして、配置転換によって精神の状態が不安定になっているの? 情緒不安定ってやつ?

 そうよね。そうに決まっている。

 だけど、彼には何も言わなかった。

 いまのところ、彼がわたしの正体を知っているという感じはしない。
 ということは、このままここにいれば復讐を果たすことが出来るかもしれない。

 いいえ。これまでよりずっとずっと復讐の機会は増える。いつでもどんなときでも、かれを殺すことが出来る。

 そんな最強最高の機会を逃してはならない。

 彼に「メンタル弱っ」認定されてしまい、元の宮殿に送り返されたくはない。

 いまは彼を立て、媚び入り、従順になっておこう。

 いつかくるであろうその日までは。

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