復讐相手の将軍閣下が望むので、専属の侍女としてお仕えすることになりました~溺愛されても餌付けされても、すべてを奪ったあなたを許すつもりはありませんのであしからず~
 古い宮殿の厩舎のわりには、立派であたらしい感じに見える。

 その表側には、大きめのランプが二つ灯されていて、この世が急にあかるくなったかのような錯覚を抱かせる。

 そのとき、厩舎の裏側からだれかがやってきた。といっても、ウオーレンにきまっているけれど。

 彼は、両肩それぞれに藁束を担いでいる。そして、そのまま厩舎の中に入って行った。

 へー。ほんとうになんでも自分でやっているのね。

 だれもよりつかないから、自分でせざるを得ないのよ。

 同情するなどとはとんでもないことだけれど、憐れんでやるのはいいわよね?

 厩舎まで小走りで近づくと、開けっ放しの大きな入り口から入ってみた。

 藁と馬糞と灯火の油の臭いが鼻梁をくすぐる。

 厩舎内は、最低限の灯火しか点していない。入り口付近、それから馬房の近く。

 入り口側には藁の束が積み上げられていて、ピッチフォークやシャベルや馬具などが雑然と置かれている。
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