復讐相手の将軍閣下が望むので、専属の侍女としてお仕えすることになりました~溺愛されても餌付けされても、すべてを奪ったあなたを許すつもりはありませんのであしからず~
「でっ、これなんだけど。もともとの炭の量が多すぎたのよ」

 肉と野菜のローストは、なぜか真っ黒けっけになってしまった。ちゃんと見ていたのに。

 炭の量が多すぎたのよ。つまり、火力がすごすぎたわけ。

 火力がすごすぎれば、いくら注意を払っていてもすぐに真っ黒けっけになってしまうのは当然のことよ。

「こういうのは、ローストする物と量を考慮して炭の量を考えないと」
「なるほど。調理にはうるさい、ね。そういうことか。わかった。おれが悪かった。あとはおれがやるから、きみはテーブルのセッティングをしてくれ」
「了解。あ、それはどうするの?」

 もはや何かわからない真っ黒けっけの食材を指さした。

「炭になったところを出来るだけこそげとって食うよ。もったいないからな」

 ちょっとだけ意外だった。

 とっととポイしてしまうのかと思った。

 それとも、彼は究極のケチなのかしら。

 わたしには、ちゃんとした肉と野菜のローストを食べさせてくれた。

 甘めのソースがとっても美味しい。野菜は甘みがあるし、肉はジューシーなのでソースなしでも充分美味しく食べることが出来た。

 彼は、わたしに言った通り真っ黒けっけの肉やら野菜やらを食べていた。

 苦いはずなのに、「美味い」とやせ我慢しながら。

 デザートにナシのパイを焼いてくれたので、二人でワンホールずつペロリと食べてしまった。

 ああ、今夜も大満足。

 食事に関しては、ここに来て正解だったわよね。 
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