復讐相手の将軍閣下が望むので、専属の侍女としてお仕えすることになりました~溺愛されても餌付けされても、すべてを奪ったあなたを許すつもりはありませんのであしからず~
小一時間練習し、いよいよ遠乗りに出かけることになった。
いったん厩舎に戻ると、ウオーレンはもう一頭馬をひっぱってきた。
先夜は気がつかなかったけれど、他の馬房にもう一頭いたらしい。
鹿毛の美しい馬である。金色の鬣は、三つ編みにしてリボンで結んでいる。
「可愛い」
可愛すぎる。ストームから飛び降りると、彼女に駆け寄りその頭部をギュッと抱きしめた。
「この馬は、きみ用にと準備していた牝馬なんだ。彼女は、最近個人的に入手したばかりだから軍馬ではない。穏やかでやさしい馬だ。おれが調教した」
「ウオーレン様が調教? だったら、荒ぶるって感じじゃないですか?」
「まさか。そんなふうに調教は出来ない」
「イヤですわ、ウオーレン様。冗談です。本気にとるなんて、意外と真面目なのですね」
「い、いや、そ、そうかな?」
太い指先で鬢のあたりをスリスリしているウオーレンを見ながら、わたし用に準備したって言わなかった? とふと思った。
どうでもいいことだけど。
「名前ですが、まさか『レッド・ローズ』。通称ローズではないですよね? それは、違いますよね? まさか、そんな子どもでもつけないような単純でバカみたいな名をつけるわけないですよね?」
ぜったいにそんなバカなことはない、と思いつつにこやかに尋ねてみた。
「……」
ウオーレンのごつい両肩がガックリ落ちた。それどころか、膝からくずおれた。
そう、なんだ。
あらためて、ウオーレンのネーミングセンスに絶望を覚えた。
いったん厩舎に戻ると、ウオーレンはもう一頭馬をひっぱってきた。
先夜は気がつかなかったけれど、他の馬房にもう一頭いたらしい。
鹿毛の美しい馬である。金色の鬣は、三つ編みにしてリボンで結んでいる。
「可愛い」
可愛すぎる。ストームから飛び降りると、彼女に駆け寄りその頭部をギュッと抱きしめた。
「この馬は、きみ用にと準備していた牝馬なんだ。彼女は、最近個人的に入手したばかりだから軍馬ではない。穏やかでやさしい馬だ。おれが調教した」
「ウオーレン様が調教? だったら、荒ぶるって感じじゃないですか?」
「まさか。そんなふうに調教は出来ない」
「イヤですわ、ウオーレン様。冗談です。本気にとるなんて、意外と真面目なのですね」
「い、いや、そ、そうかな?」
太い指先で鬢のあたりをスリスリしているウオーレンを見ながら、わたし用に準備したって言わなかった? とふと思った。
どうでもいいことだけど。
「名前ですが、まさか『レッド・ローズ』。通称ローズではないですよね? それは、違いますよね? まさか、そんな子どもでもつけないような単純でバカみたいな名をつけるわけないですよね?」
ぜったいにそんなバカなことはない、と思いつつにこやかに尋ねてみた。
「……」
ウオーレンのごつい両肩がガックリ落ちた。それどころか、膝からくずおれた。
そう、なんだ。
あらためて、ウオーレンのネーミングセンスに絶望を覚えた。