復讐相手の将軍閣下が望むので、専属の侍女としてお仕えすることになりました~溺愛されても餌付けされても、すべてを奪ったあなたを許すつもりはありませんのであしからず~
 ああ、そうね。酒をぶっかけた仕返しよね。それはわかっている。だけど、理由はほんとうにそれだけなのかしら。

 まさかわたしの正体を見抜いて、なんてことはないでしょうね。

 なにせあの気取った銀仮面が邪魔をするから、彼の表情を読むことが出来ない。

 その下が醜かろうとなんだろうと、そういうことには興味がないのでかまわない。だけど、表情が読めなければその考えや思いを読むことは難しい。

 パーティーのときだって、ちょっと怒っているのかふつうに怒っているのかめちゃくちゃ怒っているのか、そういうささいなことがわからなかった。

 仕返しするつもりだけなのか、それともわたしという存在を認識している上で呼び寄せたのか……。

 もしも後者だったら?

 その場で刺し殺す? 

 そのときの為に、独学でナイフの使い方を学んでいる。まぁ、調理の延長線上みたいなものだけど。それでも、切ったり刺したり突いたりくらいは出来るはず。

 石造りの宮殿の前に立ってみた。
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