復讐相手の将軍閣下が望むので、専属の侍女としてお仕えすることになりました~溺愛されても餌付けされても、すべてを奪ったあなたを許すつもりはありませんのであしからず~
 ウォーレンは、ここにたった一人でいるわけ? 自分のことは自分でするか、従卒にやってもらいながら?

 まぁ、軍の関係でここにはほとんどいないらしいけれど、それでも古びた宮殿にたった一人でって、どれだけ寂しい男なのかしら。

 もっとも、「銀仮面の獣将」と異名を持つ彼にはふさわしいのかもしれないけれど。

 とりあえず、会ってみないことには状況がつかめないわよね。

 もしも正体がバレているのなら、それはそれで対処するしかない。

 たとえば、さっさと逃げだすとか差し違えるとか。

 よし。それでいきましょう。

 方針が決まれば即行動。

 というわけで、エントランスに近づいてトランクを石床上に置くと、ムダに威厳のある扉を拳で叩いた。

 ドンドンばんばん叩いてみるけれど、まったく反応がない。

 そうよね。いまも彼一人だったら、これくらいの音がきこえるわけがないわよね。

 つぎは、扉を蹴りまくった。ちびてくたびれはてているペタンコ靴がどうにかなってしまいそうなほど、扉を蹴りつけた。

 それでもやはり、反応がない。

 そのつぎには、ぶつかった。全身全霊をもって、ついでに助走をつけて全身を使っておもいっきりぶつかった。

 が、やはり反応がない。
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