朝なけに


「美味しい」


そのラーメンは、沢山歩いたかいがあると思うくらい美味しい。
濃厚な豚骨のスープをレンゲで掬い口に含むと、
箸を割りすぐに麺を啜る。


「だろ?
昔、アイツらとよく食いに来てた。
高校の頃から二十歳くらい迄、よく俺らこの辺りで遊んでて」


アイツらは、千里さんと照さんの事だろうな。
この辺り、わりとS町の歓楽街辺りのような雰囲気があるな。
都会の街のど真ん中から外れてはいるが人通りは多い。
まだ時間が早いからかラーメン屋の店内はまだ空席がある。


「遊ぶって、何して遊ぶんですか?」


単純に、何をして遊ぶのか気になる。


「まあ、そこらのクラブで騒いで酒飲んだり…。
喧嘩したり…。
後は、言えない」


高校生からクラブに入り浸り飲酒も喧嘩もダメな行為なのに。
それは言えても、言えない事って…。
かなりの犯罪行為とかだろうか…。
そうやって思っているのが顔に出ていたのだろうか。


「お前、俺にどんな幻想を抱いてんのか知らねぇけど、
俺らが半グレだとか呼ばれてんのは知ってんだろ?」


そう言われた。


「はい…」


「だから、言えないような事もやってる。
まあ、ここ数年は、俺らは大人しくしてるが、グループの下の奴らは色々やってんだろな」


中さんは、半グレグループのリーダー。
その色々やってる人達のリーダーで。


「あの、言えないような事って、どんな事ですか?」


それを知らずに、中さんをこのまま好きだと言うのは違うような気がする。


「お前…」


中さんは呆れたように、息を吐いている。


「教えて下さい。
それを聞いても私の気持ちは変わらないと思います」


ほんの少し、自信はないけど。


「とにかく、ラーメン食ってからでいいだろ?」


そう言われ、それに頷いた。


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