朝なけに
ラーメンをスープも殆ど残さずたいらげた所で、
先に完食していた中さんが店内の喫煙所で一服を済ませ戻って来た。


「さっき、言えないって言ったのは、クスリだ」


何の前触れもなく、私の目の前の席に座るとそう話し出す。


「クスリ…覚醒剤とかですか?」


私が思っている通りだろうか…。



「ジャブだけじゃなく色々試した。
気に入ってコカインをよくやってた」


コカイン…。
名前は聞いた事はあるけど。


「詐欺みたいな事や女を無理矢理みたいな事はしてねぇけど、
クラブでうぜぇ奴殴ってそいつの財布から金抜いたり、乱交みてえな事してるのを、俺はヤッてないけど端で見てたりはしてた。
人は殺してないが、殺しかけた事はあるな。
グループでヘマした奴をしめたり…簡単に言うとリンチだな。
後は…違法賭博とかか」


そうやって聞いていて、心臓が恐怖でバクバクとしているのを感じる。


「他にもあるかもしれないが、忘れた」


これ以上ない事に、ホッとしてしまう。
目の前の中さんに改めて目を向けて、その顔を見ていて、やはり恋しいと思う。


「…分かりました。
確かに、私は中さんに幻想を抱いていたのかもしれませんが、
それを聞いても私は中さんが好きみたいです」


それは、過去だからかもしれない。
そうやって話している中さんの顔が、その事を後悔しているのが分かったから。


「お前くらいの歳の時、色々な事にムカついてて。
まあ、単純に若かったんだろうな」


中さんのその悪行は、若さゆえなのか。
何か悩みでも抱えていたのだろうか?


千里さんや照さんのような親友が居ても、中さんはそうやって何かに怒りを抱いていたのか。


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