朝なけに
「今は、何かに怒っててって事はないのですか?」


「そうだな。段々と大人になって来たら、家族なんてどうでもいい。
それに、感情のコントロールも昔よりかは出来る」


本人の言うように、今の中さんは穏やかに見える。
突然現れた私の事も、付き合ってはくれないが受け入れてくれているし。
だけど、中さんの心の根っこでは、今もその怒りのようなものが渦巻いているのではないだろうか?



「あの、中さんの家族の事訊いたらダメですか?」


つい先程、家庭が複雑だと言っていた。
だから、訊いていいのか迷うけど。


「俺の親父は二回結婚してて。
俺は後妻の子供で、兄ちゃんは前妻の子供で。
で、兄ちゃんとは12も歳が離れてんのもあるけど。
仲良しってわけではなくて」


「聖王会会長のお兄さんですよね?」


有名な暴力団のトップの。


「そう。前に兄ちゃんがヤクザで殺されたのは話したけど。
兄ちゃんの母親がヤクザの家系で、俺らは…。
いや、うちの親父が代表の建設会社も表向きには看板出してないが、聖王会のフロント。
うちはろくな家庭じゃねぇよな」


ろくな家庭かはともかく、普通の家庭ではないのは分かる。
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