朝なけに
「中さんのお母さんはどんな人ですか?」


「うちの母親は、妻子ある男に金目当てで寄って行くような女」


「え?」


「後妻って言ったが、元々は母親は親父の愛人だった。
父親の前の嫁が亡くなって、運良く後妻におさまっただけで。
親父と結婚してから、俺を産んだ。
多分、兄ちゃんに親父の会社とか取られたくないからってだけで、俺を産んだのかもな。
俺の事なんて、母親はどうでもいいから」


「え、それって、お母さんがそう言ったんですか?」


「言わなくても、分かるんだよ」


いや、色々お母さんの事誤解しているんじゃ、と思う気持ちはあるけど。
私は中さんのお母さんがどんな人なのか全く知らないから。
中さんの言う事は、本当なのかもしれないし。


「でも、俺は親父の会社なんて継がない。
兄ちゃんもそうで、継ぐ所かヤクザになって。
うちの母親だけが、勝手に色々思い込んで」


やはり、中さんの心の中に怒りのようなものは今もある。
静かに語るけど、中さんの目を見てるとそれが分かる。


「俺の行ってた中学、兄ちゃんが行ってた所なんだ。
そこに行けって俺に言ったのは、母親で。
俺をその名門校に入れるのに必死で。
なんつーか、俺が前妻が産んだ兄ちゃんに負けんのが、たまらなく嫌だったんだろうな」


中さんはそんな母親の思いを分かりながら、必死に勉強してその学校に入ったのかな?
そして、それが嫌になった。


「もし中さんの言う通りなら、全てが嫌になる気持ちは分かります」


「だろ?
そりゃあグレるよな」


そう茶化すように笑っている。
この感じが、中さんが大人で感情を抑え込んでいるって事なのだろうな。



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