朝なけに
「あの、中さん。
思い出したのですが」


「なんだ?」


「写真撮ってもいいですか?
電車の中で約束してくれましたよね?」


そう訊くと、一瞬中さんはキョトンとしていたが、すぐに笑い出す。


「お前、変なタイミングで思い出すな」


確かに、中さんの過去の悪事や家族の話で空気が重くて、こんな時に言い出す事ではないとは思うけど。
この思い空気を変えたくて、口にしてしまう。


「撮り直しとかなしで、一枚だけ撮れ」


「はい」


鞄からスマホを取り出し、カメラアプリを開き中さんに向ける。
画面越しに見る中さんも、やはりキラキラとカッコ良くて。
その輝きを閉じ込めるようにシャッターを押す。


カシャリと音がして、画像が保存された。


「ありがとうございます。
待ち受けにしますね!」


中さんのワンショット。
確認してみるが、実物には劣るけど超素敵。



「待ち受けは辞めろ」


本当に辞めて欲しそうな目を向けられ、
観念したように、分かりましたと返した。




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