朝なけに
「…とりあえず、明日から来い。
照、あとはお前が説明しとけ。
俺も、なんか頭痛えから帰る」


千里さんがそう言う。


「えー、今夜は朝迄三人で飲むって」


「修司さんの店行ってる。
どうせ中もそこだろ?」


「あ、なるほど」


照さんがそう言うと、千里さんはこの店から出て行った。


しゅうじさんの店?
そこに行けば、また中さんに会える!


私がそう思い、千里さんの後を追おうとすると、それをさせないように照さんに腕を掴まれた。


「もう葵衣ちゃんが中の事を好きなのは止めないけど、
今夜は辞めておきな。
しつこいと中に嫌われるよ」


中さんに、嫌われる…。
それは、嫌だ。


私が追い掛けないと知ると、照さんはその手を離してくれた。


「千里の店、キャバクラだけどそれは大丈夫?」


キャバクラ…。


その存在くらいは知ってるけど、S県の田舎町で生まれ育った私にはスナックくらいしか馴染みがなく。
今夜初めてこの辺りの歓楽街に足を踏み入れて、そう呼ばれているお店を見た。


とてもキラキラしていたが、あくまでもそれは外から見た感想で、
その中がどうなっているのかは分からない。


「別に断ってもいいよ。
多分中も本気で葵衣ちゃんにここの飲み代を払って貰おうなんて思ってないから」


「なるほど。私は試されているのですね?
中さんに対する気持ちが本当かどうか」


「そうなのかな?
試してるというか中的に葵衣ちゃんに急に好きだとか言われて困ってて、夜の店で働く事に怖じけづいて、このまま葵衣ちゃんが自分の事を諦めてくれたらって感じなんだろうね」


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