朝なけに
トン、とすぐにオレンジジュースのグラスが目の前に置かれた。


「ありがとうございます」


なんだか喉が渇いていて、すぐに半分くらいストローで吸い上げた。


「あれから、中君とどう?」 


「中さんから、どう聞いてます?」


そう返すと、修司さんは笑っている。


「葵衣ちゃんの事を、可愛い奴だって言ってた」


本人から聞くのも嬉しいが、そうやって人伝いに聞くのも嬉しいものだな。



「俺に何が訊きたいの?
もう直接、中君本人から訊けるんじゃないの?」


わりと修司さんは、中さんから色々聞いているんだな。
言われたように、大体の事は今なら私はもう中さんに直接訊ける。


「修司さんは、昔中さんのお兄さんの秘書で…。
なら、真湖さんの事も知ってますよね?」


「知ってるよ。
加賀見会長がとても愛した女性」


とても愛した女性…。


真湖さんだけじゃなく、中さんのお兄さんの一夜さんもそうやって大好きだったんだ。
なんだか、その二人の思いに胸が痛くなる。
一夜さんが死ななければ、今頃二人はどうなっていたのだろうか。


「修司さんは、中さんが真湖さんを好きな事知ってますか?」


「まあ。中君分かりやすいから。
本人も隠すつもりもなさそうだし」


「真湖さんは、中さんをどう思っているのでしょうか?
今も真湖さんは一夜さんの事を思っているのは知ってます。
でも、中さんの事を、少しも好きではないのでしょうか?」


「どうかな?
真湖が中君をどう思っているのか。
けど、もし真湖が中君を少しでも好きなら、どうしたいの?」


どうしたいの、か…。


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