朝なけに
更衣室で涙が収まって来ると、私服へと着替えを済ませる。
着替えながら、中さんともう終わったのだからこのお店を辞めようかな、と思った。
勿論、あのバーでの飲み代は必ず返すつもりだけど。


千里さんに会ったら中さんを思い出すから、
中さんと関わりのある人のお店で働く事が辛い。


けど、こういった夜のお店じゃないと返せない金額だから、
他のお店に移らないと。


全て正直に千里さんに話して、このお店を辞めさせて貰おう!
どうせ遅かれ早かれ、中さんか照さんから夕べの事を千里さんも聞くだろうし。

善は急げ。


更衣室の扉を開けると、千里さんがすぐ近くに居て。
ちょうど良かった、と思う。


「あ、あの千里さん、少しお話が」

「いいから来い」


腕を掴まれる。


「来いって何処に?」


「お前に指名だ」

私に指名?

え、今日はもう働かなくていいんじゃ?
それに、もうドレスを脱いだし。


「あの、千里さん?
指名って…?」


そう問う私を無視して、半ば引きずるようにフロアに連れて行く。


< 120 / 166 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop