朝なけに
フロアに出ると、私服の私に視線が集まる。
いや、千里さんに引きずるように連れて来られている事に対しての、視線かもしれない。


千里さんの見た目は、ヤクザみたいで。
そんな人に無理矢理連れて来られた、私。


フロア真ん中のテーブル迄連れて行かれ、そのソファーに座っている人物を見て、目を見開いた。


「…中さん」


中さんは、驚いている私を真っ直ぐに見て来るけど。
その顔が凄く怒っていて、怯んでしまう。


夕べの事を、中さんは怒っていて…。
そりゃあ勝手にああやって、真湖さんに私は接触してしまって。
それに、真湖さんは中さんに酷い事ばかり言っていて。
それは、私のせいで…。


「一応言っておくが、ここは人目があるからな」


千里さんのその言葉の意味は、何?
人目があるから、私を殴ったりするな?とか?


「分かってる。ちょっと話すだけだ。
千里、外せ」


その中さんの声から、怒りがひしひしと伝わって来る。


「ごゆっくり」


千里さんはそう言い残して、バックヤードの方へと歩いて行く。
待って下さい!と、その背を追い掛けたい。



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