朝なけに
大学の方では、萌香には無視され続けていて、相変わらず私は少しボッチ。
少しなのは、時々話し掛けてくれる子は何人か居るから。
でも、一緒に昼食を摂る程の仲良しの子は居ない。
なので、今も食堂の隅のテーブルで、一人寂しくランチ。
寂しくうどんをすする。



「ここがいいかな…」


スマホ片手、アルバイトの求人広告に目を通して行く。
そろそろ働かないと。
このファストフード店なら、中さんのマンションから歩いて10分くらい。
とりあえず、応募してみよう。
そう思い、求人サイトから応募する。
折り返し、登録した電話番号に連絡があるみたい。


その応募を終え、スマホをテーブルに置いた時。
 


「ここいい?」


その男性は、そう言いながら私の前の席に座った。
なので、いいもダメも、私は何も言えてない。
それにしても、食堂なのに何も食べないのか、向かいに座った久保田君は何も持ってない。
私に何か話?


「…久保田君、私に話し掛けてくるなんて珍しいよね?」


私は今までこの久保田君とは、挨拶くらいしかした事がない。
同級生だけど、あまり接点もなく。
萌香がこの久保田君と仲が良いから、名前と顔を知ってるくらいで。



「萌香と最近喧嘩したんでしょ?」


もしかしたら、萌香と私が喧嘩した事で、この人は私にこうやって話し掛けて来るのだろうか?
もしかして、萌香との仲を取り持ってくれる?
そう思うと、期待したように嬉しい気持ちになったのは一瞬で。
すぐに、照さんの言葉を思い出した。


"―― アカネちゃんと萌香ちゃんが上手く行かない理由は、友達じゃないからだと思う――"


だから、萌香とはもうこのままでも…。


別に、萌香には無視されるだけで、特に嫌がらせされているわけではないし…。
それに、今の私には中さんという彼氏が居て、それで幸せ一杯で。
地元に戻れば、文人をはじめ友達は一杯居るし…。


なんだか、本当にもうこのまま萌香とは絶縁でもいいような気がした。


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