朝なけに
「この店の店長の秋山です。
和田オーナーの知り合いの子で、本日から入店希望の…えっと名前は?」


「別に、知り合いじゃねぇ。
つーか、お前、名前何にする?」


「名前?」


もしかして、源氏名みたいなやつかな?


「どんな名前でもいいのですか?」


「ああ。ふざけた名前言ったら殴るが」


千里さんのその言葉を聞き、真剣に考える。
殴られたくないから。


「…アカネ、はどうでしょうか?」


「お前、本名が葵衣だったな?
青と赤か」


「はい」


自分の名前から連想して、正反対の名前にしてみた。


「まあ、なんでもいいか」


興味無さそうに、千里さんはそう返して来る。
とりあえず、殴られなくて良かった。



「それにしても、このお店の名前素敵ですよね!
"jewel"宝石」


その私の言葉に反応したのは千里さんではなくて、店長の秋山さん。


「ですよね?
和田オーナーの飼ってる猫から取った名前だそうですよ」


「え、そうなのですか?」


「はい。ここは和田オーナーが初めて持ったお店で。
他にも系列店舗はあるのですが、オーナー室があるのはこのお店だけで、だから、よくこのお店にいらっしゃいます。
オーナーにとってこのお店は本当に特別で」


「そうなのですね!」


「お前ら勝手に人の話で盛り上がるな」


ちょっと千里さんは不機嫌で、私も秋山店長も口を閉ざした。


< 15 / 166 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop