朝なけに



「あー、それは照だろうな?
アイツSNS とかで下の奴らとも繋がってるから。
前に照に葵衣の通ってる大学聞かれたな。
下の奴らにお前の事見張らしておくって」


今夜、中さんは千里さんと照さんと飲んでいて。
夜更けに帰って来た中さんは凄く酔っぱらっている。
そして、楽しかったのかとても機嫌が良い。


「そうなんだ」


帰ってシャワーを浴びてソファーに座る中さんの横に座り、今日の出来事を話す。
なんとなく、毎日こうやって夜に話している。
今夜は中さんがそうやって飲み会で遅かったので、話さなくてもいいか、と思ったけど。
大学での、知らない人達にまで私が中さんの彼女だと知られている事を、中さんに訊きたくて。
それで、今の中さんの答えで、解決してスッキリ……。


いや、今日、真湖さんと会って、それを中さんに言うか言わないかで迷っていて。
今日言わないと、言わないままになりそうだな、とか思って。


「どうした?」


私の顔が悩んで思い詰めていたのか、中さんに気付かれる。
でも、言い出すいいきっかけ。


「あの、今日真湖さんに会って…。
あ、今日は本当に偶然で!ほら真湖さん刑事で!」 


「ああ。そういや、今日S町で強盗あったな。
真湖、今この辺りの管轄で強行犯係だっけ」


今日会った真湖さんの姿を思い浮かべ、女刑事って感じでかっこ良かったな、と思う。


「あの、真湖さんに中さんと付き合ってる事話した。
良かったかな?」


「良いだろ」


「うん」


中さんは、真湖さんの事をまだ好きなのかな?
それに、真湖さんは、中さんは一夜さんに振り向いて欲しいのだと言っていて。
その意味は私には分からない。


「葵衣と付き合ってまだ一週間ちょっとだけど。
お前と付き合って良かったって、思ってる。
やっぱり俺は、誰よりも葵衣が好きだ」


「あ、うん…」


改めて言われると、照れてしまう。
顔も赤くなるし、心臓が凄くドキドキとしてしまう。


真湖さんが言っていた、中さんは一夜さんに振り向いて欲しい、の意味を思い切って訊いてみようかと思ったけど。
顎を手で掬われ、奪うようにキスをされて、結局訊けなかった。


ただ、この時、それを訊かなくて良かったのか。
それとも、この時に訊いていれば良かったのか。


後から思う日が来る。


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