朝なけに
警戒しながらも、私は紅茶と出されたフルーツタルトを口にしていた。
紅茶だけではなくフルーツタルトも一流品なのか、今までに食べた事がないくらいに美味しくて、すぐに完食した。


「本当に美味しいです!」


「それは良かったです。
ケーキはホールで買って来ているからまだあるので、良かったらもう1つどうですか?
とりあえず、俺の分をどうぞ」


佐渡さんは紅茶に口を付けながら、相変わらず優しく微笑む。
紅茶は好きなのだろうけど、ケーキは食べていなくて、手の付けられていないケーキの皿を私の方へと差し出した。


「どうしよう…。これ以上食べたら太りそうですし。
でも、食べたい。
あ、ケーキ写真撮らないと!
幼馴染みに見せるんです」


私はすっかりと、餌付けされてしまった。
鞄の中に手を入れスマホを手にすると、何件もの不在着信に気付く。
そっか、講義前にサイレントにしてそのままだった。
着信は中さんから。


「葵衣っ!!」


息を切らした中さんが、部屋の中に入って来る。
私のケーキを楽しんでいる姿を見て、えっ、って驚いた顔をしている。


「心配しなくても、葵衣さんには何もしてませんよ。
うちの人間が中君になんて伝えたのかは知りませんが…。
血相変えて飛び込んで来た辺り、早く来ないと葵衣さんに何かするとか言ったのですかね」


佐渡さんはそう言うと、とりあえず座って下さい、と中さんを私の横に誘導する。
中さんは戸惑いながらも、私の横に座った。


「中さん、このソファーすっごいふかふかしてるでしょ?」


能天気に話し掛ける私に、喋るな、というように中さんに睨まれる。


「佐渡さん、一体なんなのですか?
急にうちの会社に電話して来て、葵衣を預かっているって」


「わざわざ会社を飛び出して来てくれたのですね。
葵衣さんには話したのですが、中君に話がありまして」


「俺に、なんの話が?」


先程から、中さんも佐渡さんも普通に話しているけど。
一触即発のような空気が部屋を覆う。
中さんの方がピリピリとしている。


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