朝なけに
「お前、すげぇ重い。
ヤる気失せた」


え、どういう事?
私が初めてだから、抱く気を失くしたの?


「なんでですか!?
そりゃあ初めてだから、上手く出来ないですけど!
でも、一生懸命がんばります!
だから、抱いて下さい!」


そう言うと、中さんは困ったように頭を掻いている。


「初めてって、やっぱり特別だろ?
すげぇ好きな男としろよ」


「だから、私は中さんが好きです」


「別に、それは否定しねえけど。
違うんだよ」


「何が違うんですか?」


「なんか、違うんだよ」


なんかって、なにそれ?


「なんつーか、お前が好きだと思うのもそうだけど、ちゃんとお前の事を好きだって男としろよ」


だったら、中さんが私の事をそうやって好きになってよ、と思うけど。
望みが薄そうで口に出来ない。


「おまえが初めてじゃなきゃ、お前可愛いし、体だけってのも悪くないかって思ったけど」


「じゃあ、もう終わりですか?
だって、もし抱かれていたら、この先も二度三度とこうやって中さんの部屋に入れて貰えたかもしれないのに…。
今夜だって、もう帰れって事ですよね?」


「いや、それはここで寝ていきゃいいけど。
ただ、前半のそれはそうだな。
二回目は、ねぇか」


今夜の、これっきり?
そんなの嫌だ。


中さんは、ヘッドボードに置いてある煙草に手を伸ばして、それに火をつけて吸い出した。
リビングもそうだけど灰皿があったので、きっと喫煙者なのだろうとは思っていたけど。


中さんの事は好きだけど、煙草の匂いというか煙は好きじゃないな、と思う。

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