朝なけに
一番目
今日も夜は千里さんが経営するキャバクラに出勤した。
昨日と同じように、早い時間にもう上がっていいと秋山店長から言われる。


着替えると、私はオーナー室へと行く。
ノックしてから扉を開くと、昨日と同じように千里さんはソファーに座り、目の前のパソコンを睨むように見ている。


「あの…、昨日は初日だったからあれですが、今日も私だけこんなにも早い時間に終わりなんですか?」


そう訊くと、めんどくさそうな目をこちらに向けられた。


「いまいちお前を雇っている理由が分からねえから」


「いや、理由は私は借金があって」


その流れで、このお店で働くようになった。


「別に、あのバーの代金は中が出て来た時点で払わなくてよくなった。
けど、なんかお前は払うって言って、中が俺の店で働かせろとか言うから、とりあえず雇ったけど」


「けど、なんですか?」


「いや。まあ、とりあえずちゃんと給料は払ってやるから、今の感じで緩く働いてろ。
客と店外で会う誘いは全部断れ。
俺が思うに、お前この仕事向いてねえだろうし」


「でも、今日5人から指名貰いましたよ」


「まじか?」


千里さんは、本気で驚いている。


本当に今日は、5人から場内指名だけじゃなく、本指名も貰った。
ただ、みんな、ジュリさんのお客さんの連れて来た人だけど。
多分、ジュリさんが私の為にお客さんに誰か連れて来てとお願いしてくれてそうだけど…。


「…なるほど。お前ジュリに気に入られてんのか?
人たらしではあるのかもな」


千里さんも、私の不自然な指名の裏をジュリさんの力なのだと気付いたみたい。

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