朝なけに
「お前、部屋番号覚えてないとか、ストーカー失格だな」


玄関の扉を開いた中さんは、開口一番そう言う。


「私はストーカーじゃなくて、中さんの五番目の女です」


「じゃあ、どっちにしろ失格だな」


「え、そんな!」


もしかして、失格ならこうやって中さんに会える権利を剥奪されたり?


「とりあえず、さっさと入れよ」


中さんは、くるっと私に背を向け、リビングの方へと行く。


「待ってください」


私は中に入り、靴を脱ぐと慌てて中さんの後を追った。


リビングのテーブルには、お酒のビンとグラスが載っている。
お酒飲んでいたのかな。


「お前、腹減ってないか?
俺、外で食って来たから、インスタントくらいしかないけど」


「大丈夫です。お店でちょこちょことテーブルの上のおつまみとか、食べているので」


「お前、マジで千里の所で働き続けんのか?
別に辞めても構わねえけど」


「けど、あのバーでの代金、今の仕事じゃないと返せないです」


「だから、それ自体払う必要ねえのに」


「一度払うと口にした以上、払います。
女に二言はないです」


こうやって中さんと会えるようになったからやっぱりもう払わないとか、自分的にない。


「お前…、やっぱりすげぇ面倒な奴だな?
俺、シャワー浴びるから」


中さんはそう言って、バスルームの方へと行く。


私が急に行くって行ったから、何時来るか分からない私をシャワーも浴びずに待っててくれたんだな。
ジャケットとネクタイは外しているが、中さんはまだスーツ姿。


やっぱり、中さん好きだな。


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