朝なけに
そうこうしていると、コーヒーとパンケーキが運ばれて来た。


「パンケーキ直ぐに来るんですね?
レンジでチンでしょうか?」


焼きたてでは、ないのかな?
でも、ふわふわした見た目で、パンケーキの上に豪快に生クリームが乗っていて。
それに圧倒される。


「人件費削るのに、いちいち焼いてらんねえだろ?
場所的に、ここは夜は勝手に人が集まって来る。
待ち合わせやなんだで。
客も、味なんかどうでもいいからな」


千里さんは経営者側の意見だな。


「あ、写真撮らないと!」


私は鞄からスマホを取り出し、パンケーキの写真を撮る。


「お前、SNSとかやってんのか?」


「いえ。地元の幼なじみにLINEで送るんです」


文人に後でLINEしよう。


「お前、この辺りの人間じゃねぇのか?」


そういえば、中さんにも似たような事訊かれたな。



「そうなんです。
私、大学進学の為にS県から出て来たばかりで」


「んで、あんなバーでボッタくられそうになってんのか?」


「はい。本当に、お恥ずかしいです」


本当に、この人達があのバーにあの時居なかったら、
私と萌香はどうなっていただろうか…。
あの時、金髪の木下さんって人が騙した女の子をキャバクラやガールズバーに紹介している、みたいな事を言っていたな?


そう思うと、今と何も変わらないのでは?


なんだかそれが可笑しくて笑い出すと、目の前の千里さんは怪訝そうに眉間にシワを寄せている。


「お前、ついにおかしくなったか?」


「え、はい。本当におかしくて!
だって、結局飲み代払うのに、キャバクラで働いてて」



この人達が来てもこなくても、一緒で。



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