朝なけに
「文人は、本当に親友で。
幼い頃からずっと仲良くて、とても大好きなんですけど、
恋ではないんですよ。
それは、お互いに」


「さっき、元彼って言ってたじゃねぇか?」


「はい。なんとなく文人と付き合ってはみたんです。
5年くらいでしょうか?
付き合ってないのに、男と女がずっと一緒に居るのが変だみたいな世間の雰囲気に呑まれて」


「へぇ」

とあまり興味が無さそう。
だけど、吸っていた煙草を灰皿に押し付けて消すと、千里さんは口を開いた。


「もし、お前が中と付き合い出して。
中がお前にそんな男の存在が居るのが嫌だ、って言ったらどうする?」


「どうする?って」


それって、中さんと付き合ったら文人と関係を切れって事?


「もし、千里さんが言うように、私と中さんが付き合って、そう言われたら…。
悪いけど、中さんとは付き合えないです」


本当に文人には恋愛感情はないし、中さんが大好きだけど。
文人は物心付いた頃からの友達だから。
もう家族みたいなもの。
今の段階では、中さんよりも文人の方が大切。


「そうか。
中がどう言うか知らねえが、大半がそうやって自分の女に親しい男が居たら気に入らねえ。
それを言わなくてもな」


「なら、中さんには、文人の事を頑張って認めて貰います!
私と文人には本当にそんな感情はないので、絶対に認めて貰います!!」


「まあ、もし中と付き合えたら、頑張れよ」


そう鼻で笑われる。
例えばの話に、私もムキになり過ぎた。


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