朝なけに
「あの、中さんの一番目の女性はどんな感じの人ですか?
千里さんも会った事あるんですよね?」


話を聞いてる感じ、千里さんもその女性に会った事があるのだろう。


「ああ。
けど、それは俺じゃなく、中本人に訊けよ」


「…はい」


なんとなくいつもの千里さんの教えてくれない感じではなくて。


「その女を俺が見てるのと、中にはどう見えてるのか違うしな」


中さんの目には、その女性はとても素敵に映っているのだろう。


「もう四年くらいか?
中がその女に溺れだしたの」


「溺れる?」


「ああ。溺れてんな。
息も出来なくて、苦しそうに見える」


その女性は、中さんのお兄さんの恋人だった人で。
中さんの、片思い。


「あの女は自分が苦しいから、中を一緒に闇に引き摺り込んでいるように見えんな」


中さんとその女性の関係は、本当になんなのだろうか。
世間で言うセフレとかみたいに軽い物でもなく、
その女性もただ中さんを弄んでいるだけではないのか…。


「お前くらい積極的な奴なら。
中をその闇から引っ張り出してくれんじゃねぇかって、少し期待してる」


それ程、中さんのその恋愛は、良くないものなのだろうか。
そして私にそれ程の事が出来るのだろうか…。


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