朝なけに
「千里さんって、いい人ですよね?
そうやって友達の中さんの心配もそうですが、今夜も、中さんにドタキャンされて可哀想な私を、こうやってパンケーキを食べに連れ出してくれて」


顔は怖いけど、神様のような人だ。


「じゃあ、中じゃなく、俺にするか?」


「え?」


「冗談だ。
ただ、お前とヤりたいくらいの下心はあるけどな」


ヤりたい、って…。


こうやって面と向かって言われる事なんて、なかなかないよな。
けど、言わないだけで男の人ってみんなそう思っているのだろうか?
中さんも、私と体だけならって、思ったみたいだし。
私が処女じゃなければ。


「中さんは、私が処女だから遊びで抱く気はないみたいなのですが。
でも、これからも私と二人で会ってくれるみたいで。
なんでなんでしょう?」


そう言って、慌てて補足する。


「もちろん!私の事を好きだとか、そんな理由じゃないのは分かってます!」


中さんに何の特もない、私との関係。
まあ、キスしたりはしているけど、それだけで男性が満足出来るとは思わないし。


「俺は処女でもヤッちまうから、中がなんでか分かんねぇ」


同じ男で中さんの事をよく分かっている千里さんでも、分からないか。


「あの、千里さんも遊んでたりするんですか?」


「あ?なんだ、その"千里さんも"ってのは?」


「照さんは、女癖が悪いんですよね?
中さんも、初めてが遅かったとしても、一番目の女性を好きと思いながら、他の女性と関係を持ったりして。
そんな二人と友達の千里さんも…」


「照のはあれだが、中のは違う。
好きな女が振り向かねぇから、それで荒れて他の女と遊んでいるような感じだ。
中は真面目だ」


中さんは、真面目…。
今一つそれに完全には納得出来ないけど。
実際、理由はどうあれ遊んでいるのなら。


私も処女じゃなければ、中さんの一番目の女性への恋の辛さの紛らわしになっていたのかもしれないな。
いや、一線は超えてないが、もしかしたら私もそうなっているのだろうか?
それなら、さっき千里さんに訊いた答えになるな。


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