朝なけに
「俺はそんな葵衣ちゃんだから、気に入ったんだけど。
でも、そんな葵衣ちゃんなら中を救ってくれるんじゃないかって期待して、俺は大人しく身を引いて成り行きを見守ろうかなって」


先程とは違い、そうやって本名で呼ばれる。
きっと、今夜照さんはそれを私に言いたかったのだろう。


中さんを救って欲しい、と。


「中さんを救うって。
あの中さんが片思いしてる女性からですか?」


「あれ?知ってるの?千里から聞いた?」


「え、違います」


なんとなく、千里さんから聞いた事は伏せておこう。


「葵衣ちゃん分かりやすい」


「え、その…」


「千里の事だから、1から10迄話したわけではないのだろうけど。
あの女、中の事一体なんだと思ってんだって」


照さんの表情からスッと笑みが消えて、怒りのようなものを感じる。
中さんや千里さんと違い、優しそうに見える照さんだから、よけいにそれが怖いと思った。


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